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2人のえりこさんのこと ~チャットモンチーからマザーハウスまで~

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ずっと昔から、2人のえりこさんがスゴいと思っていた。

1人はチャットモンチーのボーカル、橋本絵莉子さん。

もう1人は、マザーハウス代表取締役の山口絵理子さん。

 

チャットモンチーは、2000年に結成された徳島県出身の

女性ロックバンドである。力強いギターロックに乗せて

等身大の女の子の気持ちを歌い上げ、多くの人に支持された。

 

一時期「ガールズバンド」という言葉がしきりに使われていた。

意味合いとしては、女の子だけで結成しているから、ということだと思う。

チャットモンチーも「ガールズバンド」として取り上げられていた。

あえて「ガールズ」と付けるあたり、わたしはいつも違和感があった。

果たしてそれは付ける意味があるのだろうか?

かわいい、を売りにしているのかもしれないし、

男性に比べて女性でロックをする人が少なかったのかもしれない。

しかし、いまやロックに男性も女性もない。

女性だけで構成しているバンドの質は飛躍的に向上した。

 

ガールズバンドなんて言うのは、どこか失礼ではないだろうか?

世界を相手にしても戦える、素晴らしいロックが日本にある。

男性も女性も関係ない、良いものは良いと素直に認められるロックバンド。

わたしの持論でいくと、それを決定的にしたのはチャットモンチーなのだ。

 

チャットモンチーは残念ながら2018年に解散してしまったけれど、

彼女たちが残した音楽は、のちに続く人たちに多大な影響を与えた。

ねごとも、SHISHAMOも、hump backも、

すべてチャットモンチーの影響を受けていると言っていい。

女性がロックをすることは、もはや特別でもなんでもない。

チャットモンチーは、女の子の飾らないありのままの姿を歌い、

新たな道を切り開いていった先駆者なのだ。

 

橋本絵莉子さんの見た目は、ごく普通のかわいらしい女性である。

しかし内に秘めている思いはとてつもなく強い。

彼女は高校のとき、すでに音楽でやっていくことを心に決めていた。

大学の進路希望用紙を白紙で提出したというのだから、その覚悟はすさまじい。

大学に行きながらでも音楽活動はできるような気がするし、

何も考えずに先伸ばしにして、ダラダラと過ごす人はたくさんいる。

日本人は横並びの意識が強く、早くから決断して行動に移せる人は非常に少ない。

きっと周囲の反対に会ったと思うし、いろいろと問い正されたりしたと思う。

自分と照らし合わせて考えてみても、とても真似できるものではない。

非常に芯の強い女性である。

 

彼女は普段ものすごくおっとりとしていて、知らない人からすれば

とてもロックバンドをしている人には見えない。

しかしひとたびギターを持って歌い始めると、その様子は一変する。

音楽の才能に満ち溢れ、女の子の等身大の気持ちを高らかに歌い上げていく。

橋本絵莉子さんの見た目は普通っぽいけれど、音楽のレベルは全然普通ではない。

かわいらしいルックス、かわいらしい声。

さまざまなものを兼ね備えていて、見る人を魅了する。

チャットモンチーのライブは、とにかく熱量と完成度がすさまじい。

09年にZepp Tokyoで行われたライブの模様を収録した

DVD『WASH THE LIVEHOUSE』は、とてつもない完成度である。

冒頭から最後まで名曲のオンパレードで、どこを取っても非常に素晴らしい。

後世まで語り継ぎたい、素晴らしいライブである。

 

わたしはチャットモンチーのすべてのアルバムを持っている。

アルバムごとにそれぞれ違った表情があり、

チャットモンチーの変遷を楽しむことができる。

なかでももっとも素晴らしいアルバムは『告白』である。

チャットモンチーがもっとも輝いていた時期であり、

曲を聴いていても、張りつめた緊張感が伝わってくる。

DVD『WASH THE LIVEHOUSE』は、

アルバム『告白』の曲をメインに構成されている。

10年近く前の作品になるけれど、わたしの中ではいまだに

最高峰の位置する屈指の名盤である。

 

山口絵理子さんは、主にバッグの販売をしている会社、

マザーハウスの社長である。

初めて知ったのは、「情熱大陸」を見たときのことだった。

笑顔が素敵でチャーミングな女性なのだが、

やっていることはとてつもなく野心的なものだ。

 

山口さんの歩みはとにかく破天荒すぎる。小学校時代にイジメに遭い、

その反動で中学のときに非行に走ってしまう。

強くなりたいという気持ちから、高校で柔道部に入る。

女子部員は彼女1人。男子に混じって練習を積み重ねていき、

やがて全国大会に出場して、日本のトップクラスにまで登りつめていく。

その後猛勉強を重ねていく。目標は慶応大学。

しかし、周りからはそんなの絶対に不可能だと、相手にされない。

無理もない。彼女が通っていたのは、偏差値40の工業高校だった。

卒業したらほとんどの人が就職するかフリーターになる。

大学受験をする人はせいぜい3%くらいのものだ。

卒業生で名門大学に進学した人は、かつて誰もいない。

「無理だから辞めておけ」誰しもが、彼女が本気で

目指していることを相手にしなかった。

しかし、3ヶ月間の猛烈な受験勉強をした結果、慶応大学に現役で合格する。

普通では到底考えられないことをやってのけてしまうのがすごい。

周りの反対を押し切ってすべてエネルギーに変え、自分を信じて

突き進むことができる、そのバイタリティはどこからやってくるのだろう?

普通の人であれば、到底マネできないことである。

 

その後大学に進んで、開発学を学んでいく。

学んでいくにつれて、開発援助という仕組みに疑問を感じるようになる。

ネットで「アジア 最貧国」と検索し、ヒットしたバングラデッシュに

単身移り住むようになる。そこでジュードという素材に出会う。

ジュードを使ってバッグを作ろうと奮闘していくが、

裏切りにあったり、言うことを聞いてくれなかったり、

品質がまったくダメだったり、さまざまな試練に遭いながらも、

バッグ作りに励み、やがて少しずつ軌道に乗せていく・・・。

 

著書「裸でも生きる」は、ガムシャラに走り抜けた彼女の魂の記録である。

普通では考えられない並外れたエピソードの数々は、驚きの連続である。

何が彼女をそこまで突き動かすのか?

普通であればとっくにあきらめてしまうようなことが次々と起きる。

それでも彼女は前に進むことを決して辞めない。

不器用で失敗ばかりで、何一つうまくいかなくても、

常に挑戦し続けていく・・・。その気合いと根性には頭が下がる思いである。

 

やっていることはとてつもないことばかりだが、

見た目はいたって普通の女性である。

妙にギラギラしていることもなく、どこにでもいそうな感じなので、

とても親近感が沸いてくる。

 

『裸でも生きる』を読んでいていつも思うことがある。

こんなことを言うのは大変失礼ではあると思うけれど、

正直言ってもっといい文章で本を作れると思うし、

編集やライターが入って手直ししほうがいいのでは、と思ってみたりもする。

でも、そんなことをすべて吹き飛ばしてしまうほど、大きな感動がある。

この本を読んでつくづく思うのだ。

文章で人を感動させるというのは、必ずしも文章がうまくなくてもいい。

こころでしっかりと向き合っていれば、絶対に相手に伝わるものである。

下手にテクニックを持ち合わせた小説家よりもずっと心に響いてくる。

『裸でも生きる』はリアルに感じさせてくれる、素晴らしい作品である。

 

わたしが百貨店に勤めていたころ、マザーハウスが池袋の西口にある

ライバル店に実店舗ができて、そこに山口絵理子さんが来るということで、

実際に観に行ったことがある。

 

山口さんの周りは非常に多くの人で賑わっていた。

テレビや本などで、その活躍ぶりは誰もが知るところとなっていた。

キラキラしている姿がとてもまぶしかった。

ビジネスと社会貢献は両立するものではない、そう考えられていた。

でも山口さんはそこにずっと疑問を持っていた。

ビジネスと社会貢献は決して相反するものではない、

両立するものだ、そう考えて、自らの行動により実践してみせている。

話してみたい気持ちもあったが、恐れ多くてそのまま帰ってしまった。

 

山口さんはその後も、ネパール、インドネシア、スリランカと、

世界中に拠点を広げている。

日本のみならず、台湾や香港などでも店を構えている。

一日は小さな一歩でも、毎日積み重ねていくうちに、

誰もたどり着けないところまで、突き進むことができる。

それをリアルに体現している人だと思う。

 

2人のえりこさんのことを思うと、いつも頭が下がる思いである。

若くして自分の進むべき道を見つけて、それに向かって歩みを進めていく。

2人のことを見ていると、勇気と希望が沸いてくる。

明日も頑張ろう、素直にそう思うことができる。

2人のえりこさんには、今後も変わらず活躍を続けて欲しいと思う。