ボクシングの名勝負は数多くありますが、わたしの中でとりわけ印象深いのは、八重樫東vsローマン・ゴンザレスです。
勝敗がハッキリとついたにも関わらず、試合後の表情を見ると、一体どちらが勝ったのかというくらい対照的だったことを、いまでも鮮明に思い出すことができます。
激闘王として知られる八重樫選手ですが、この試合はまさに捨て身覚悟の玉砕戦法でした。
当時最強の名を欲しいままにしていたロマゴンが、戸惑ったのも無理はありません。
目次
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八重樫vsロマゴンの戦前の予想について
ローマン・ゴンザレスは当時、軽量級最強と言われ、すべての階級の中でナンバーワンを決める、パウンド・フォー・パウンドで、1位に君臨していました。
軽量級の選手がこのランキングで1位になるのは、極めて異例のことです。
7回の防衛を誇っていた世界チャンピオンの新井田選手からベルトを奪い、そこから怒涛の強さで勝ち抜いていきました。
あまりの強さに挑戦者が現れず、対戦相手を探すのも一苦労だったのです。
当時のローマン・ゴンザレスは、それほど破格の強さでした。
最盛期に井上尚弥と対戦していたら果たしてどちらが勝っていたのか、ボクシングファンにとって興味の尽きない話題なのです。
しかし誰も太刀打ちできない相手に、自ら手を挙げた人物がいました。
それが八重樫選手だったのです。
八重樫選手はロマゴンとの戦いに名乗りを上げたときに、こんな風に語っています。
「こういうのは、誰もやりたがらないときに手を挙げるのが一番オイシイんですよ。ロマゴンが誰かに負けた後では意味がないし、衰えてきた頃に名乗り出るのもカッコ悪い。ロマゴンが完璧なボクサーであるうちにやるからいいんです」
※出典:エキサイトニュース
いくらボクサーといっても、ボコボコにされるのは誰だって怖いものです。
それをむしろチャンスと言える八重樫選手は、相当な勇気も持ち主だと思うのです。
八重樫vsロマゴンの試合経過と結末について
試合は14年9月5日、国立代々木体育館で行われました。
八重樫はロマゴンにうまく対抗するために、さまざまな秘策を練っていました。
開始早々、八重樫は足を使って動き回る展開を繰り広げたのです。
相手を翻弄するために、裏をかく奇襲作戦に打って出たように思います。
しかし軽量級最強のロマゴンには、それは通用しませんでした。
八重樫選手は即座に切り替えて、真正面からの打ち合いに臨んだのです。
ロマゴンは圧力をかけて八重樫選手に迫ります。
ロマゴンのパンチは、よどみなく流れるように次々とつないでいくのが特徴です。
ロマゴンのパンチは、確実に八重樫の顔面を捉えていきました。
八重樫は懸命に堪えていたものの回が進むにつれて、実力差は徐々に明らかになっていきます。
採点もほとんどロマゴンに持っていかれ、八重樫はもはや一発を狙うしか残されていませんでした。
しかしロマゴンは、決して手を止めることはありません。
途中からほとんど一方的な展開となり、いつ試合が終わってもおかしくない状態でした。
9回、ロマゴンが放った左フックによって、八重樫はついにダウンを喫します。
レフェリーが止めて、試合が終わりました。
9回2分24秒TKOにより、ロマゴンが勝利を収めました。
いつ終わってもおかしくない状況の中で、八重樫は1発逆転を狙って、9回まで粘ったのです。
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試合後に見せた八重樫の笑みとロマゴンの涙
試合後、ロマゴンは両手を挙げて涙に暮れていました。
キャリアを通じて負けたことがないロマゴンは、どんなに殴っても立ち向かってくる八重樫の執念に、心が折れかけていたに違いありません。
その顔は、多大なプレッシャーから解放された安堵のようでもあり、八重樫の驚異的な粘りがいかにすごいかを物語っていました。
勝者にも関わらず、あんなに泣きそうな表情をしていたのが、ものすごく印象的でした。
一方の八重樫は、ロマゴンに倒されてレフェリーからストップが告げられたあと、笑っていました。
「やっぱりそうだよな~」わたしにはそう言っているようにも見えました。
試合が終わって沸き起こったのは、観客からの熱烈なアキラコールでした。
敗者の戦いぶりに、観客はその勇気と希望を讃えたのです。
勝ったものが涙を流し、負けたものが笑う。
わたしはこんな試合を後にも先にも見たことがありません。
普通に考えると、これは逆になるはずなのです。
負けたにも関わらず八重樫は観客の要請を受けて、リング上でインタビューに応えました。
敗者がこれほど称えられた試合は、これまでにあったでしょうか?
結果は負けたものの、確実に多くの人たちにその勇姿を刻みました。
八重樫vsロマゴンに感動!いつまでも語り継ぎたい
ボクシングの名勝負はたくさんありますが、これほどまでに人の心を強く揺さぶる試合は、それほどありません。
八重樫の無謀とも言える挑戦は、多くの人の心に深く刻まれました。
強すぎるあまり多くの選手が対戦を避ける中で、八重樫は自ら名乗りをあげて、果敢に戦いに挑みました。
結果は負けましたが、それ以上に内容とか経過、そして八重樫の勇気を見るべき試合なのです。
最強の相手と対戦するのは、さぞかし恐怖だったに違いありません。
しかしこの試合で恐怖を感じていたのは、むしろロマゴンの方かもしれません。
パウンド・フォー・パウンド1位という輝かしい栄誉は、同時に自分のクビを狙って、世界中から視線が向けられている状態です。
実力差は明らかだとしても、八重樫のような執念を見せられると、それを跳ねのけるのは、容易なことではありません。
怪物と恐れられたロマゴンも、元を正せば生身の人間なのです。
計り知れないプレッシャーは、わたしたち凡人には想像もつかないものがあるのです。
ロマゴンはその後も順調に勝ち進んでいったが、17年にタイのシーサケットに敗れてしまいました。
2度目の戦いで再び返り討ちにあったとき、わたしは唖然としてしまいました。
あの強いロマゴンが、リングの上で大の字に横たわっている・・・。
想像すらできない光景でしたが、ボクシングはいつかこうしたことが必ず起きるのです。
マイク・タイソンも、かつて東京ドームで衝撃的な敗戦を喫しました。
最強と言われた者も、いつかは負けていきます・・・。
時代は変わっていき、また新たなスターが誕生していくのです。
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