八重樫東のキャリアも晩年に近づいていて、その集大成となる試合が行われました。
19年12月23日横浜アリーナで行われた世界トリプル戦、八重樫東はIBFのベルトを賭けて、南アフリカの強豪のムザラネと対戦したのです。
IBFのチャンピオンであるムザラネは、かつてはドネアとの対戦(TKO負け)、テテへの勝利など、軽量級の猛者たちと勝負を繰り広げてきました。
長いリーチを武器に攻守ともにバランスに長けた、素晴らしい選手です。
八重樫は前回の試合で、まさかの1ラウンドKO負けを喫しました。
八重樫らしいところが何も出ないまま、ほとんど何もできずに勝負が終わってしまったのです。
誰もがもう引退のときではないか?そんな考えが脳裏をよぎりました。
実際、会長からも引退を勧告されたことがあったと言います。
しかし八重樫はリングを去ることなく、2年半の時を経て世界戦に帰ってきました。
ファンとしては、非常に感慨深いものがあります。
チャンピオンは2018年7月に王者となり、これまでに2回防衛してきました。
防衛戦はいずれも日本人相手(坂本真宏、黒田雅之)に勝利を収めていて、八重樫で3人連続日本人との対戦となるのです。
八重樫東vs ムザラネの試合について見ていきます。
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八重樫vs ムザラネの試合について
八重樫の試合は毎度、熱い気持ちになりますが、今回も素晴らしい試合となりました。
八重樫は序盤から足を使った戦術で、試合をコントロールしていきます。
かつてロマゴンと戦ったときも、足で翻弄する作戦で入りました。
ロマゴンのときはハマらずに2回からすぐに切り替えましたが、今回はけっこうハマっていたように思います。
4回くらいまでは八重樫ペースで進んでいたように思えます。
ただし、ムザラネのガードは非常に堅く、しっかりと打ち返してきます。
八重樫は途中から足を止めて、打ち合うという選択を選びます。
八重樫は激闘王と呼ばれていて、試合後には毎回顔が大きく腫れ上がっています。
両者クリーンヒットがあって、だんだんと乱打戦の様相を呈してきます。
八重樫の戦い方はとても素晴らしく、見ている方も手に汗の握る展開です。
しかし、徐々に地力の差が少しずつ露わになってきます。
チャンピオンがジリジリと前に出て、八重樫を少しずつ追い詰めていきます。
八重樫も圧力に屈することなく、必死に前に出ますがチャンピオンは揺るぎません。
八重樫の顔は大きく腫れ上がっているのに対し、チャンピオンはあまり傷を負っていないのです。
最後はフラフラになって立っているのもやっとの状況となってきます。
9回の終了間際、レフェリーに試合を止められて終わりました。
9回2分54秒、TKO負けで試合終了となったのです。
八重樫は十分すぎるほど魅せた
八重樫のボクシングに対する飽くなき探究心には、本当に頭が下がる思いです。
これまでに何度も私たちの心を強く揺さぶる、熱いファイトを繰り広げてきました。
ボクシングを興行として見た場合、八重樫の試合は絶対に面白いと言い切れます。
今回もとても熱い気持ちにさせてもらいました。
世界戦の舞台、メリンドに1ラウンドで負けたとき、もう終わりだと思っていました。
しかし決して負けることなく、地獄の底から這い上がってきました。
今回の敗戦でそろそろ引退が濃厚と思われますが、十分すぎるくらい活躍しました。
3階級制覇という輝かしい栄光は、いつまでも色褪せることはありません。
今後の去就を見守りながら、お疲れさまとお伝えしたいと思います。