2008年の天皇賞(秋)は、中央競馬の歴史に残る大接戦でした。
競馬ファンの間では、いまだに語り継がれている名勝負となっています。
わたしはこの勝負が大好きで、YouTubeでかれこれ100回以上観たと思います。
いま見返してみても、まったく飽きることがありません。
稀代の名牝がガチンコでぶつかり合った、奇跡の名勝負だと思います。
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中央競馬の名勝負について
中央競馬において、強い牝馬はこれまでにもたくさんいました。
わたしがパッと思い浮かぶものは、ジェンティルドンナ、ブエナビスタ、メジロドーベル、エアグルーヴ、ヒシアマゾン、などです。
最近(19年6月時点)では、アーモンドアイが牝馬3冠を達成し、名牝の仲間入りを果たしました。
歴代の牝馬たちは、牡馬に屈することなく対等に渡り合ってきました。
ウォッカとダイワスカーレットは、歴戦の強者たちの中においても、ピカイチの強さを誇ります。
この2頭が同時期に生まれて、同じレースで争っているというのは、ほとんど奇跡に近い僥倖です。
中央競馬の名勝負で、わたしがすぐに思い浮かぶのは、以下の2レースです。
96年 阪神大賞典 ナリタブライアンvs マヤノトップガン
99年 有馬記念 グラスワンダーvs スペシャルウィーク
ナリタブライアンは、ただ強いだけではなく、勝負根性の強さが光りました。
意地でも負けないという王者のプライドを感じました。
グラスワンダーとスペシャルウィークは、見た目ではもはや判別がつきません。
歴代の名馬たちはこうした名勝負があるからこそ、さらに輝きを放っていると思います。
天皇賞(秋)はすごい顔ぶれだった
天皇賞(秋)の主役は、完全に牝馬2頭でした。
ウォッカとダイワスカーレット。
ウォッカは前年のダービーの覇者、ダイワスカーレットは桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯の覇者です。
この2頭が同じ時代に生きているというのは、本当に考えられない奇跡だと思います。
ほかの天皇賞(秋)の出走馬は、その年のダービー覇者であるディープスカイ。
菊花賞には参戦せず中距離レースに的を絞り、古場戦線に乗り込んできました。
ドリームジャーニーは、朝日杯に勝った馬です。
父親はステイゴールドで、のちにオルフェーヴルやゴールドシップなど、怪物級の馬を続々と誕生させます。
天皇賞(秋)は例年、豪華メンバーが揃うのですが、この年も顔ぶれもすごいものがありました。
またこのレースを語るとき、フジテレビの青嶋アナウンサーの神実況も欠かすことはできません。
青嶋アナウンサーの神実況があったからこそ、天皇賞(秋)が大いに盛り上がったのは、間違いありません。
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天皇賞(秋)のレースについて
レースはドリームジャーニーが少し出遅れて、後方からのスタートで始まります。
先頭に立ったのは、ダイワスカーレット。
ダイワスカーレットの先行策は、予想通りの展開です。
中段から後方にかけて、ウォッカとディーススカイ、さらに最後方付近にはドリームジャーニーやカンパニーがいます。
ダイワスカーレットが自身のペースを保ったまま、レースは流れていきます。
1000メートルの通過は59秒。
平均かやや速いくらいのペースです。
少し縦長の展開となり、最終コーナーへと突き進んでいきます。
最後の直線、ダイワスカーレットは、なおも先頭を渡しません。
ライバルたちはここぞとばかりに、ダイワスカーレットに襲いかかります。
中団から出てきたのはディープスカイ、そしてその外からウォッカ。
新旧ダービー馬が、姿を現わします。
ウォッカとディープスカイが、足を伸ばしてグングン加速していきます。
ウォッカがついにダイワスカーレットを捕らえて先頭に立ちます。
このまま2頭で勝負がついてしまうのか?
誰もが一度はそう思ったに違いありません。
わたしたちは、ここで目を疑うような光景を目の当たりにします。
残り100メートル、最内を走っていたダイワスカーレットが再び差し返してくるのです。
ありえない光景でした。
スタートからずっと先頭を引っ張ってきて、逃げ続けてきた馬が、一度は捕らえられたと思いきや、再び二の脚を使って差し返します。
最強の名を欲しいままにした牝馬が、天皇賞の晴れ舞台で、ライバルのウォッカを打ち負かすために、脅威の脚を繰り出すのです。
ディープスカイは少し伸びが足りません。
勝負は完全に牝馬2頭に絞られました。
果たして勝つのはウォッカか、ダイワスカーレットか。
実況を勤めていたフジテレビの青嶋アナウンサーは、興奮のあまりこんな言葉を口にします。
「大接戦ドゴーン」
ほぼ横一線で重なり合ったところでゴール。
会場は興奮冷めやまぬ状態となり、騒然としています。
果たしてどちらが勝ったのか?
ターフビジョンには、ゴール前のスローモーションの映像が映し出さます。
だが何度も見ても、勝敗は分かりません。
レースが終わっても、審議のランプが灯ったまま、一向に進みません。
写真判定はなんと13分にも及び、やがて電光掲示板に映し出されます。
勝ったのは…、ウォッカでした。
タイムは1分57秒2、レコードでした。
ライバルたちの壮絶な闘いの中で、とてつもない記録が誕生したのです。
同時代に生まれた、名牝による劇的な戦いは、史上まれに見る大接戦でした。
わたしはいろんな競馬を観てきましたが、これほど興奮を覚えたレースは観たことがありません。
ウォッカvsダイワスカーレットは後世にまで残したい、屈指の名勝負なのです。
ウォッカは馬券を買う側にとってみれば、非常に厄介な馬でした。
強い馬であることは、誰の目にも疑いがありませんでした。
牝馬として64年ぶりにダービーを掴む、というのは、とてつもない大偉業です。
ただし、ウォッカは大勝するかと思えば、あっさり負けたりもする…。
ウォッカが良い走りをするのかどうかは、レースにならないと分かりません。
一方のダイワスカーレットは、抜群の安定感を誇り、必ず上位に食い込みます。
生涯を通じて、勝ち負け(1着か2着)を外したことが一度もありません。
先行策でつねに上位のポジションを取り、そのまま押し切って勝ってしまう。
安定のダイワスカーレットに対して、爆発力のウォッカ。
そんな対比も、面白いレースでした。
天皇賞(秋)で、勝敗を分けたものは何だったのでしょうか?
これはもはや運としか言いようがありません。
あと100メートルあれば、完全にダイワスカーレットが差し返していました。
東京と相性のいいウォッカが、運を味方につけた、としか言いようがありません。
完全にウォッカに差されたと思いきや、残り100メートルで再び差し返すという、ダイワスカーレットのあり得ない勝負根性。
本当に強い馬というのは、こうした部分に表れるのではないでしょうか?
ダイワスカーレットの根性は、恐るべきものがあると思います。
ウォッカとダイワスカーレットの勝負ばかり目が行くけれど、地味に、カンパニーがとてつもない強襲を見せているのもツボの1つです。
最後の直線に入るまでほぼ最後方にいるのに、気がつけばディープスカイに次ぐ4着に滑り込んでいるのだから、ものすごいです。
競馬の名勝負は数多くあるけれど、08年の天皇賞(秋)ほど熱い戦いは、なかなかありません。
天皇賞(秋)は、中央競馬の歴史に刻まれる、一世一代の名勝負です。
ウォッカは19年4月1日に亡くなりました。
生涯成績は26戦10勝。GⅠ勝利は通算で7勝。
牝馬として64年ぶりに日本ダービーを制した偉業は、今後、他に並ぶ者が出てくるのでしょうか?
08年と09年の年度代表馬であり、ダイワスカーレットとの戦いは、中央競馬を大いに盛り上げました。
頂点を目指し死力を尽くして戦った最高の名馬、ウォッカを弔うべく、記事を執筆いたしました。
ウォッカには、感動をありがとうと伝えたいです。