百貨店がずっと昔から厳しいと言われ続けていて、もう随分と経っています。
わたしが入社した十年近く前から、すでに時代遅れと言われていました。
百貨店なんてまだ行く人いるの?若い人はそんな感覚ではないでしょうか?
実際、百貨店の主要顧客は、60歳以上だったりするのです。
百貨店はいろんな施策をしていますが、どれも効果をあげているとは言えません。
小手先の変化ではなく、思い切り振り切らなければ今後も厳しいように思います。
百貨店はこのまま縮小して、潰れていく運命にあるのでしょうか?
百貨店に10年以上勤めてきた元社員が、今後について考えてみたいと思います。
目次
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百貨店の売上は右肩下がりに推移している
百貨店の売上は右肩下がりに推移しています。
90年代には市場規模が9兆円あったのですが、現在は5兆円近くまで低下しています。
かつては小売の王様でしたが、いまや百貨店をそんな風に見ている人は1人もいません。
いまならまだ手を打てる段階だと思いますが、このままの状態を続けていくと、やがて対処できなくなるように思うのです。
百貨店は何でもあるけれど欲しい物がない!
これは実際にわたしが母親から言われた言葉です。
実際に店頭に立っていて、客からこんな声がよく聞こえてきます。
百貨店に対して一定の期待をしているのですが、いざ買い物しようとなると欲しい物が1つもない…。
その声を受けて柔軟にやるべきなのですが、現状はそれがうまくできていません。
ただしこういった声はまだ百貨店に関心があり、好意的に見ている人の意見です。
若い人に聞くと、もっと厳しい言葉が並びます。
・値段が高いだけ
・古臭い
・おじいさんやおばあさんが行くところ
若い人に至っては選択肢の眼中に入らず、興味すら持ってもらえません。
百貨店自体、主要顧客は高齢の人なので、こんな声は拾う必要はないかもしれません。
しかし、戦略的にそうなったのではなく、何も変わらないまま気がつけばこうなった、と言う方が正しいのではないでしょうか?
戦略がないまま掛け声だけでは、ジリ貧状態から抜け出すことはできません。
これらに対処できないなら、時代遅れと言われても仕方がない状況です。
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百貨店は時代のチャンネルに合っていない
百貨店は残念ながら、時代のチャンネルに合っていません。
お中元やお歳暮といった旧来の慣習に縛られたまま、変わることができていません。
古いものがダメではないのですが、同じやり方を踏襲していてはジリ貧で終わります。
いまの時代に合わせるなど、何かしらアレンジが必要だと思うのですが、百貨店は旧来のやり方から抜け出すことができていないのです。
蔦屋書店のような取り組みは、本来は百貨店が行うべきだったと思います。
文化の発信というのは、百貨店に課せられた大義の1つではないでしょうか?
レンタルビデオから始まって、Tポイントや蔦屋家電など新たな施策を次々と打ち出す経営は、端から見ればうらやましくもあります。
いろいろ言っても結局は、百貨店は自らが変わる決断ができていないだけなのです。
他業種に負ける理由は百貨店の強みがまったく活かせていない!
百貨店が競争力を失い、地位が低下している理由は何なのでしょうか?
もっともよく言われるのは、専門店の台頭です。
・ユニクロ
・ニトリ
・家電量販店
・セレクトショップ
百貨店は何でも揃っているのですが、専門性に欠けていました。
品揃えにこだわり、価格も抑えられた専門店に、客足が向くのは当然のことです。
百貨店はこれらの攻勢に対して、小手先の手段だけで対抗していました。
目先のことは何とかなっても、長い目で見ればもはや勝負は見えています。
早くから危機感を持って対処していれば、変わっていたかもしれません。
百貨店に蔓延しているのは、百貨店らしさという意味のないプライドばかりなのです。
百貨店らしさなんて、客が決めることであり、自分で定義するものではありません。
過去に栄光に居座っているだけで、新たな百貨店らしさを作り出す気概など、これっぽっちも持ち合わせていないのです。
変化を忘れた企業に未来はない
老舗が老舗たるゆえんは、革新を続けていった結果なのです。
ソニーがゲームのプレイステーションを発売したとき、散々バカにされました。
現在ゲーム事業はソニーの屋台骨となっていて、それなくして考えられません。
百貨店の内部にいて感じたのですが、百貨店という形に捉われすぎです。
自らが先導して客を教育していく…、そんな意気込みに欠けていると思います。
蔦屋書店のような店ができて、本屋の個性の無さが露わになりました。
百貨店ももっと走り続けて欲しいのですが、残念ながらできていると言えません。
自社製品を強化していくという取り組みは、数年後にはだいたい終了しています。
わたしはその現場を、イヤというほど目の当たりにしてきました。
世の中はあれが売れているらしい…、これをうちに取り入れれば…。
トレンドを読むのも大事ですが、人に何とかしてもらう姿勢が強すぎです。
自分の力で本気で開拓していく…、そんな意志が感じられないのです。
このままだと百貨店はやがて絶滅危惧種になる?
百貨店は今後も縮小を続けていき、地方店は閉店して行くことになります。
将来的には、都心の一等地だけに集約していくことになるでしょう。
百貨店で買い物するというのは、絶滅危惧種になるのかもしれません。
元社員としては寂しい限りですが、時代に見合った価値を提供できていないので当然です。
百貨店が復活するために必要なこと!
USJの再建を果たしたマーケターの森岡毅さんの話は、とても参考になります。
>プレジデントオンライン リアル店舗がネット通販に勝つ唯一の方法
敏腕マーケターから見れば、小売業は強みをまったく活かせていないのです。
ネット販売が台頭することにより、リアルで買う意義が問われるようになりました。
リアルの買い物には、まだまだ残された余地はたくさんあるように思います。
パティシエ・エス・コヤマには、子どもしか入れない店があります。
大人は見たくて仕方がないので、子どもから必死に情報を引き出そうとします。
単にモノを売るだけではない、独自体験を売る方法が功を奏しています。
文喫という入場料を取る本屋が話題となり、人気を博しています。
百貨店も入場料を取って、それ相応の世界観を作れば良いではないでしょうか?
百貨店はVIP顧客だけを集める限定の場を設けていますが、高額商品を寄せ集めしているだけです。
最初から入場料を取るくらいの気合いで、本気でディスプレイをすれば、少しは変わるのではないでしょうか?
リアルができることは、まだ無限にあるように思います。
ただし百貨店は現状維持するのが手一杯で、新しいことをやる余力はほとんどありません。
闊達に議論をしてアイデアを形にしていく…、そんな姿勢はほとんど感じられません。
真摯に向き合わなければ、今後も衰退していくばかりのように思うのです。
百貨店が再び陽の目を見るためにいまから施策を立てて欲しい!
百貨店はかつて小売の王様であり、家族で楽しめる場所でした。
さまざまなサービスが出てくる中で、百貨店は何も変わろうとしなかったのです。
老舗は常に変化を続けた先に、結果として伝統が息づいていきます。
百貨店らしさに捕らわれている時点で、すでに過去に目を向けている証拠です。
百貨店らしさを破壊してしまうくらいの、覚悟と矜持が必要だと思うのです。
それによって客離れが起きることもあるでしょう。
本業に未来が感じられないなら、ほかの業種に手を伸ばしても良いかもしれません。
思い切った経営判断をしなければ、ますますジリ貧に追いやられるだけなのです。