お笑いはひと昔前、関東と関西の違いが明確に存在していたと思います。
関東の笑いと関西の笑いがあって、どうしても埋められない溝がある…。
いまでもその違いを指摘することはできますが、その差は随分と薄まりました。
少なくともお笑い芸人を見て、出身地を意識することはほとんどなくなったと思います。
わたしは関西出身なので、ずっと関西弁の漫才に馴染みがありました。
幼い頃から「吉本新喜劇」とか「生活笑百科」などを、しょっちゅう観ていました。
特に生活笑百科では、笑福亭仁鶴の安定した司会、上沼恵美子の卓越したおしゃべりなど、幼心にすごいな~と感じていました。
オール阪神・巨人や宮川大助・花子、中田カウス・ボタンなど、大御所たちは本当にすごい漫才を繰り広げていたように思います。
関東と関西のお笑いについて考察してみたいと思います。
目次
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M-1初期のお笑いについて
M-1グランプリを初めて開催したのは2001年のことです。
この頃は、関東と関西のお笑いというのは、明確な力の差があったと思います。
関西勢が圧倒的に強くて、決勝に残っているほとんどが関西コンビ。
たまに出てくる関東弁の漫才は、テンポはいまいち、ツッコミのバリエーションに乏しく、すごく退屈だったと記憶しています。
漫才の醍醐味は掛け合いにあるのですが、それが完全にワンパターン化していました。
頑なにその立ち位置を変えず、ツッコミも通り一辺倒で、変化に乏しいまま突っ走っていく…。
関東弁の漫才は平面をなぞるだけに終止していて、まるで立体感を感じない…。
幼い頃のわたしは漠然と、そんな風に考えていたように思います。
関東のお笑いに足りないこと
関東のお笑いは、バカになるとか自虐といった発想があまりありません。
ただの意地の張り合い、口喧嘩、みたいに感じる漫才が多かったのは紛れもない事実です。
漫才はボケとツッコミの立ち位置が自在に変わっていき、多彩なバリエーションによってあらぬ方向へと話が進んでいく…。
予想外の展開とか裏切りみたいなものが、まったくと言って良いほど感じられませんでした。
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時代を経て徐々に溝は埋まっていった
M-1グランプリも時代が経つにつれて、その溝はだんだんと埋まっていきました。
わたしは初めてサンドウィッチマンやオードリーを観たときに、その面白さがすぐに理解できませんでした。
観客のものすごい反応、審査員の高評価に対して、わたしはついていけなかったのは紛れもない事実です。
そこには関東弁で話す人に対する、フィルターみたいなものがあったかもしれません。
彼らの漫才は、これまでまったく観たことのない新しいものでした。
受け入れるまで抵抗がありましたが、だんだんと彼らの実力が本物だと気付きました。
彼らはその後、たちまちスター街道を歩んでいきました。
ほかにも、バナナマンや、おぎはやぎなど、実力のある関東系の人たちが出てくるようになって、すっかり定着しました。
関西人の悪いところについて
関西人がお笑いにおいてすべて優位かというと、決してそんなことはありません。
わたしは関西人で関西の文化が大好きですが、関西人の嫌な部分もありました。
ノリを強要する
関西人はノリが合えば最高に楽しいですが、合わない人とお笑い談義をするのは地獄です。
大してお笑いセンスのないのに、何か勘違いをして無駄にノリを強要してくる…。
学生時代、お笑いを分かっていない声の大きい人には、本当に苦労させられました。
ドライと言われる関東人の間の方が、心地良かったりします。
すぐに自虐に走る
わたしは昔、自虐という発想のない関東人をつまらないと思っていました。
でも一方で、すぐに自虐に走る関西人がすごく嫌だったと記憶しています。
自虐は明るく突き抜けていれば良いのですが、中には暗い人もたくさんいます。
自虐を言うのは時々でよくて、しょっちゅう言うのは逆に疲れてきたりします。
すぐにオッサンと言って笑わそうとする
関西人はオッサンとかオバハンを、いじり倒すという独特な(?)風習があります。
それ自体は面白いのですが、話の持って行き方が安易だな~と感じることがあります。
オッサンとかオバハンと言っておけば笑う…、そんな感じはないでしょうか?
芸人の舞台公演などでも、すぐにオッサンとオバハンを持ち出してくる…。
大阪のオバハンはキャラが濃いので、いじり倒してこそ味が出てきます。
それなのに、オッサンとかオバハンという単語自体で笑わそうとしてくる…。
わたしの観測範囲では、そんな風に感じることが多々ありました。
言葉自体は何の面白みもなく、生き物として面白いのだと思います。
オトンとオカンはいまでも関西だけ?
関東人で母親をネタにする人は、あまり多くはないように思います。
それに比べると関西人は、圧倒的に身内をこき下ろすことが多いです。
関西人はとにかく、オトンとかオカンのネタがやたらと多い。
関東と関西の雪解けはかなり進みましたが、それでも一部では残っていると思います。
関東の関西のお笑いの差はなくなった?
いまはほとんど、関東か関西かを意識することはありません。
むかしの芸人はよくいがみ合っていたと聞きますが、いまは恐らくそういったこともないでしょう。
相互の交流が進んで、うまく溶け合ったのだと思います。
そして着実に、お笑いのレベルが上がっています。
お笑いのレベルで言えば、間違いなく大幅に向上したように思います。
近年のM-1グランプリの面白さは、恐ろしいほど高いレベルとなっています。
関東と関西がいい具合に混じり合い、両者の面白いところが見事に融合しました。
お笑いの進化は留まることを知らない…、それが嬉しかったりするのです。