本・雑誌

【再読】アーウィン・ショー『夏服を着た女たち』の感想 男の本音が満載!

アーウィン・ショーの『夏服を着た女たち』は、いつまでも色褪せることのない名作である。

わずか17ページの短編小説で、ニューヨークの街を歩く、夫と妻の会話から成り立っている。

 

サマードレスの女たち (小学館文庫)

 

色とりどりの夏服を着た美しい女性たちが、ニューヨークの街を華やかにしている様子は、想像するだけで楽しい気分になる。

娯楽に乏しかった昔の人が、アーウィン・ショーの小説を読んで、胸を踊らせていたのが容易に想像できる。

 

夫のマイクルは、華やかな衣装を身にまとう女性たちに目を奪われて、つい視線を向けてしまう。

妻のフランセスは、そんな夫をたしなめて、せっかくのデートだからわたしだけを見るように、言う。

みんな綺麗だからつい見てしまう、というマイクル。

キレイとかスタイルがいいとか、いちいち言葉に出さないで欲しい、というフランセス。

マイクルは、恋愛における男の本音を、余すことなくさらけ出している。

それを聞いてフランセスはイヤな思いをするが、最後には、バチッと決まるオチが用意されている。

 

いまでは特に珍しくもない、ありふれた男女の会話劇、と言えるかもしれない。

ただ、この作品が最初に発表されたのは1939年である。

日本で言えば、第二次世界大戦よりも前の話である。

そんな時代に、これほど洗練されたおしゃれな小説が生まれているのだから、すごいと思う。

同時代に日本ではどんな小説が発表されていたかと言うと、島崎藤村『夜明け前』や、志賀直哉『暗夜行路』、堀辰雄『風立ちぬ』、太宰治『津軽』などがある。

いずれも素晴らしい作品だが、どこかジメジメしていて暗い。

これらを比べると、思わずアメリカの先進性を感じてしまう。

アーウィン・ショーは当時26歳。

恋愛小説が得意で、男女のすれ違いや仲違いする様子を描くと、素晴らしい手腕を発揮する。

学生時代にこの本を読んで、とても晴れやかな気分になったことを思い出す。

 

この小説は当時、あまりに男性視点過ぎると、女性から批判の声が出たと言う。

アーウィン・ショーは、いいものが書けたと思ったものの、奥さんには読ませることができず、ずっとひた隠していた。

ある日、外出して散歩し、酒の飲んで帰ったところ、怒り狂っていたという。

発表された時代を考えれば、そういった意見も無理はない。

女性からすれば、決して気分の良いものではない。

ただ、男は得てしてこういうものである。

決して悪気はないのだから勘弁して欲しい、というのが、大半の男側の言い分になのだ。

 

いつの時代も男女のもつれは、さほど変わらないことを示している。

『夏服を着た女たち』は、男女の機微を巧みに捉えた名作なのだ。

 

『夏服を着た女たち』は短編集となっていて、ほかにも10篇が収録されている。

最後に収録されている『愁いを含んで、ほのかに甘く』も大変素晴らしい作品で、初めて読んだとき、わたしは非常に大きな感銘を受けたことを覚えている。

 

むかし読んで心に残っていた、作品について書いてみた。

アーウィン・ショーの小説は、古びたところがなく、いま読んでも十分に耐えうるので、

興味のある人は是非とも読んで欲しいと思う。

 

サマードレスの女たち (小学館文庫)