まずは結論からお伝えします。
・NHKは受信料徴収を元に、肥大化し続けている
・NHKは徴収したお金を国民に還元しているか、疑問は多い
・徴収金額の見直しが必須(受信料の値下げ、あるいはスクランブル化の検討)
NHKは公共放送としてきちんとした役割を果たしているでしょうか?
民放にはない特色ある番組や、紅白歌合戦に代表される国民的な行事など、NHKにしかできない、NHKだからこそできることは非常に多いと思います。
数々の優れた番組によって、国民に還元している側面は確かにあるかもしれません。
しかしお金の流れを見たときに、非常に不透明な部分が多いこともまた事実です。
NHKから国民を守る党によって、少しだけNHKにスポットが当たるようになりました。
NHKは一体どのような組織なのでしょうか?
わたしたちが支払っている受信料は、きちんと使われているのでしょうか?
目次
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NHKの受信料収入はどれくらいか?
現在のNHK料金は、以下のようになっています。
引用:NHK公式HPより
支払いはさまざまなプランがありますが、基本料金としては以下となります。
衛星契約・・・月額2,230円
地上契約・・・月額1,260円
また、契約者数は以下のとおりです。
引用:NHK受信料・受信契約数に関するデータより
・衛星契約2,161万件
・地上契約2,007万件
受信料金と契約件数を計算してみると以下のとおりです。
衛星契約 24,770円(年間料金)×2,161万(契約件数)=約5,352億円
地上契約 13,990円(年間料金)×2,007万(契約件数)=約2,807億円
両者を足すと 5,352億円+2,807億円=8,159億円
下記グラフによれば、受信料収入は7,122億円となっています。
引用:NHK受信料・受信契約数に関するデータより
NHKはさまざまな支払い方法があり、プランによって料金が変わってきます。
いずれにせよおよそ7,000億円~8,000億円の膨大な収益があるのです。
詳しく知りたい人は、下記資料をご覧ください。
また、NHKの受信料を支払っていない人もいます。
NHKの調査によれば以下のとおりです。
全国値 2018年度末 81.2%
(2017年度末 79.4%から1.8ポイント向上)
全体の約2割がNHK受信料を支払っていません。
※ちなみにNHKから国民を守る党の立花孝志代表は、この数字はウソだと言っています。実際は半分しか支払っていない、とAbemaTVで発言しています。
現在、NHKの収益はおよそ7,000~8,000億円なので、全員が支払った場合は、およそ9,000億円~1兆円くらいになることが見込まれます。
この金額が多いか少ないかは議論が分かれるところです。
しかし、金額が多いか少ないかはさほど問題ではありません。
議論するべきは、このお金が適切に使われているかどうかです。
NHKの現状、資産の推移について
NHKは毎年決算資料を公開しています。
NHKは莫大な資産を抱えています。
NHKの資産 ・・・1兆1,940億円
NHKの負債 ・・・4,274億円
資産-負債=純資産なので、NHKの純資産は
1兆1,940億円-4,274億円=7,776億円
この金額は、日本を代表する大手企業に匹敵する大きな数字です。
神戸製鋼・・・8,033億円(2019年3月期)
大林組・・・7,981億円(2019年3月期)
富士通・・・7,953億円(2019年3月期)
ローム・・・7,667億円(2019年3月期)
内部留保が批判される時代において、NHKは莫大な資産を抱え込んでいます。
この資産が放送に対する投資や国民の利便性につながっていれば良いのですが、内訳を見ると、決してそういったものには繋がっていません。
NHKの資産の内訳は以下のようになっています。
引用:平成30年度 NHKの決算概要より
現金預金・有価証券・・・3,808億円
長期保有有価証券・・・994億円
特定資産・・・1,707億円
上記は3つ証券投資であり、放送事業に使われているとは言えません。
3,808億円+994億円+1,707億円=6,509億円
資産全体は11,940億円なので、
6,509億円÷11,940億円=0.545→54.5%
資産全体の54%を有価証券として保有していることになります。
さらに財務諸表からこれらの詳細を抜き出したものが以下となります。
・現預金780億円(うち、現金3億、預金776億円)
・有価証券3,027億円(うち、譲渡性預金2460億円)
・長期保有証券994億円(うち、非政府保証債126億円、事業債591億円)
・特定資産1,707億円(うち、非政府保証債655億円、事業債822億円)
意味合いとしては以下のようになります。
・譲渡性預金 ・・・定期預金
・非政府保証債・・・政府関係機関債のうち、元利払いに政府保証が付かない債券
・事業債・・・主に電力会社が発行する債券
赤で囲ったものをすべて足すと、5,433億円です。
受信料として集めたお金が、放送事業や国民のために使われていれば良いのですが、財務諸表を見る限りにおいて、およそ関係のないところにお金が流れています。
これらから導き出されるものは以下のとおりです。
NHKは資産の大半を、定期預金か、政府系特殊法人または電力会社の債券で運用している
もう少し踏み込んで言うと、現在のNHKは以下のような状況です。
NHKは国民から集めた受信料を使い切れず、債権を購入して貯め込んでいる
実際にNHKの純資産は増え続けています。
2013年3月・・・6,857億円
2014年3月・・・7,074億円
2015年3月・・・7,506億円
2016年3月・・・7,827億円
2017年3月・・・8,110億円
2018年3月・・・8,633億円
昨今は大企業が内部留保を溜め込むことに、非難が集まっていますが、NHKにおいても、その状況が顕著に見て取れるのです。
自らの力で稼いでいる企業においては、使い道を決める権利はありますが、NHKにおいては、国民から受信料を徴収して資産を積み上げている状況なのです。
使い道がないまま肥大化を続けているいまの状況は、とても健全とは呼べません。
使い道がないのであれば、せめて受信料を下げるべきではないでしょうか?
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NHKと有料動画配信サービスを比較してみる
NHKと有料動画配信サービスを比べて良いかという議論はありますが、サービス内容や番組の品質など比べるときに、1つの目安にはなると思います。
現在、代表的な有料動画配信サービスは以下のとおりです。
Amazonプライムビデオ・・・月額500円
ネットフリックス・・・月額800円(ベーシック)
Hulu・・・月額933円
DAZN・・・月額1,890円
U-NEXT・・・月額1,990円
各社、さまざまな金額設定をしていますが、NHKよりは割安です。
市場原理にさらされていて、さまざまな競争を強いられている各社が安価なのに対し、国民全員一律に徴収するNHKが、衛星契約で2,230円というのは非常に割高です。
さらに有料配信動画とNHKが決定的に違う点は以下にあります。
有料配信動画・・・見たい人だけが契約
NHK・・・全世帯から一律に徴収
税金にも等しい徴収の仕方で、さらにNHKの方が高い金額を取っていることには、非常に違和感を覚えます。
さらにNHKは以下のように複数のチャンネルを持っています。
・地上波2つ(NHKとNHK教育)
・衛星放送2つ(BS1とBSプレミアム)
受信料の徴収理由として「公共放送としての役割」を名目にしていますが、中身はバラエティやお笑い、スポーツなども含まれています。
これらが本当に役割を果たしているかは、疑問に感じるところです。
NHKの支払いは、国民健康保険や国民年金などと同様、必ず負担しなければならないもので、実質的には税金です。
受信料徴収の金額に関しては、一考の余地があるように思います。
NHKと世界の公共放送の受信料と比較してみる
世界の公共放送はどのようになっているのでしょうか?
産経新聞の記事において、籾井元会長は「受信料は欧米より安い」と言っています。
>産経新聞の記事はこちら ※2014年の記事で少し古いです。
籾井元会長のこの発言は本当に正しいのでしょうか?
産経新聞の記事によると、各国の金額は以下となっています。
ドイツ・・・29,127円(年間)
イギリス・・・23,425円(年間)
フランス・・・17,955円(年間)
イタリア・・・15,532円(年間)
NHKの年間受信料は以下のとおりです。
衛星契約・・・月額2,230円(年間24,770円)
地上契約・・・月額1,260円(年間13,990円)
ドイツは多少高めですが、それ以外を見るとNHKが安いといったことはありません。
これはヨーロッパの一部の国々であり、他の国を見ると様子が変わってきます。
韓国・・・2,823円(年間)
アメリカ・・・0円
オーストラリア・・・0円
オランダ・・・0円
ベルギー・・・0円
また世界の公共放送の料金を非常に詳しく調べているサイトがありますので、よろしければ以下もご覧ください。
これらからみたときに、NHKは世界でも非常に高い部類に入ることが分かります。
(上記サイトの調べでは、日本は世界で6番目に高い料金となっています)
ヨーロッパの一部の国は、日本よりも高い金額を徴収していますが、
世界を見渡すと、日本の受信料はかなり高いことが分かります。
通常、公共放送の財源は、以下のようなものから成り立っています。
・各世帯からの受信料金
・広告
・政府の補助(税金)
世界の国々では、政府の補助金や広告など含まれているのですが、日本は世帯からの受信料で、およそ97%を賄っているのです。
産経新聞の記事内にもありますが、これは「奇跡に近い制度」なのです。
籾井元会長が言っている「欧米より安い」というのは、一部分を切り取った極めて限定的な話です。
放送法は時代に合っているのか?
NHKがくまなく受信料徴収する理由として、放送法という法律が挙げられます。
放送法第64条には、受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない、と定められています。
しかしこの法律は1950年にできたもので、時代に合っていません。
これほど昔にできた法律が、いまだに変わらないまま残り続けているのです。
NHKの受信料をめぐるトラブルは後を絶ちません。
早急な法整備をすることが必要なのですが、いまのところそういった動きはありません。
19年5月に改正放送法が成立し、今後、パソコンやスマホでもNHKを見られるようになります。
これはパソコンやスマホにも、受信料が適用されるのでしょうか?
下記の日経ビジネスの記事で、詳しく解説しています。
さまざまな場合が考えられますが、結論を言えば、追加の徴収はないようです。
テレビなし・スマホありの場合でも、受信料契約の対象にはならない、とのことでした。
理由については「ネット配信は放送ではない」というのが、答えのようです。
徴収がないのは喜ばしいことですが、わたしには難解すぎて理解に苦しみます。
結局のところ、お上の解釈1つではないか?と考えてしまうのです。
サービスが良くなるのは、評価のできることだと思います。
スマホやパソコンでテレビを見る人が増えている以上、取り入れることは賛成です。
しかし受信料については、明らかに矛盾が生じてしまいます。
スクランブル化を検討するなど、一刻も早く整備することを望みます。
NHKの受信料は値下げか払い戻しをするべき!
税金の類いのものは「なるべく公平に負担する」というのが原則です。
お金の流れがきちんと見えていれば、たとえ不利益を被っても国民は納得します。
国民皆保険制度は、そもそも損をする人と得をする人がいる前提なのです。
国民健康保険・・・病院にかかっていない健康な人は、払い損になる
国民年金 ・・・65歳の受給までに亡くなってしまった場合、払い損になる
失業保険・・・ずっと働いている人は払い損になる
多くを享受できる人もいれば、払いっ放しで終わる人もいます。
しかし、健康や長寿、雇用に関することは、国民全体で支えていくというコンセンサスがあるからこそ、これらの制度は成り立っているのです。
NHKは広くお金を徴収しているにも関わらず、お金の流れは極めて不透明です。
受信料徴収の理由も、法律を盾に取っていて、きわめて不可解です。
平等が担保されているどころか、利権の温床になっているとしか思えません。
市場原理にさらされている企業であれば、儲け過ぎたものは必ず還元をします。
小売の現場では、消費税還元セールといったことはよく行われています。
ところがNHKは放送法に守られていて、黙っていても受信料が入ってきます。
受信料を積み上げたまま、自身の懐に収めて肥大化を続けているのです。
NHKは受信料を値下げするか、払い戻しをするべきだと思います。
放っておいても勝手にお金が入ってくる仕組みが、長らくずっと続いているのは、おかしいと思うのです。
NHKから国民を守る党について
NHKから国民を守る党が、2019年夏の参議院議員選挙で1議席を獲得し、立花代表がさまざまなパフォーマンスで、マスコミを賑わせています。
政見放送では「NHKをぶっ壊す」という、大変インパクトのあるキャッチフレーズで、立花代表はすっかり有名になりました。
わたしはNHKから国民を守る党について、積極的な支持はしていません。
NHK撃退シールの配布や、さまざまな過激なパフォーマンスなど、注目を集めていく手法は理解できますが、それが良いことなのか判断しかねます。
ただし巨大な既得権にメスを入れるという意味では、1つの問題提起になっていると思います。
これまで国会議員は、誰もNHKのことをまともに取り上げてきませんでした。
NHKが国民のために放送しているというのは、もはや建前に過ぎません。
素晴らしい番組がたくさんあることは分かりますが、一方で利権の温床にもなっています。
本来であれば、国会議員がそこにメスを入れなければならないのですが、これまで誰も取り扱ってきませんでした。
ここで取り上げたものは、NHKが抱えるほんの一部に過ぎません。
問題点が表面化されるという意味において、NHKから国民を守る党はしっかりと仕事を果たして欲しいと思います。
NHKの問題について以下の本で詳しく語っています。
※本記事は、この著作を参考にいたしました。
本記事よりもさらに深い考察が行われているので、合わせて読んでいただければ幸いです。